悠生寮



          寮生たちは
          まるで旅行に行くかのように
          興奮し はしゃいでいる

          採用されたばかりの職員は
          目を輝かせ
          忙しそうに
          引越しの荷物を運んでいる

          日の光がいっぱい差し込む食堂
          床の下をスチームが通り
          足の裏からぬくもりが伝わる
          浴槽はブクブク泡が立ち
          トイレは広くて使いよさそうだ
          広々とした押入れがついた居室は
          ひとり部屋もある

          「こんなところへ入れるなんて
           みんな幸せだねえ」
          誰かが つぶやいた

          ああ
          いろいろな問題が
          こんなかたちで
          ぼかされていく

                     (1979.4.3)