さよなら   



          力強い排気音を残して
          走り去るバイク
          涙を見せまいと
          歯を食いしばりながら
          テールランプの消えた闇を
          いつまでもにらんでいた

          「元気でやれよ」
          「・・・・・・」
          笑顔で見送るはずだったのに
          力いっぱい
          肩をたたいてやるはずだったのに

          急に広くなった部屋で
          今から
          僕はひとりの夜をむかえる

                       (1969.4.6)