おやじは
朝7時20分
仕事に出て行く
雪が散らつく中で
石垣を積む
日当 多いときで6千5百円
ボーナスはわずか
退職金制度はなく
有給休暇はなく
恩給もつかない
朝 明るくなるのを寝床で待っていて
野良へ出て行く
夕方は真っ暗になるまで
家に戻ってこない
戦争から帰って30年
家を建て
田畑を取り戻し
子供を3人育てるために
肉体労働ばかり続いた
勤務時間中に
床屋に行くやつがいる
机に向かって
新聞を読んでいるやつがいる
肘掛け椅子にすわり
外ばかり眺めているやつがいる
屁理屈を言うことが
仕事だと思っているやつがいる
おやじが帰ってきた
服に雪をつけて
鼻水をたらしている
酒も飲めず
パチンコもせず
ごろごろしていることは嫌いで
道楽は仕事だと言うおやじ
頭のてっぺんは薄くなり
右の腕は
使いすぎで
160°に曲がってしまっている