おまえたちに



          お母さんが外泊した夜
          おまえたちは
          甘えられる人がいないものだから
          妙にしゃきっとしている

          あつしは
          全然やってなかった宿題を
          ひと晩でかたつけたし
          みやびちゃんは
          泣くことを忘れている
          しゅくちゃんは
          いつもと同じで陽気だけれど
          やっぱり表情が引き締まっている

          親ができなかったことを
          おまえたちに賭けたいと  
          そんなよくある親心を
          このおやじは持っていない

          のびのびと
          思うままに
          生きてくれればいい

          おやじは
          自分の世界を作る
          おまえたちを抱くのと
          まったく同じあたたかさで
          自分の人生を抱きしめる

          だから
          あまりもたれかからずに
          今夜のように
          しゃきっとしていておくれ

                         (1985.1.5)