みんなへ



          甘ったれるなよ みんな
          何もしなくても
          時は流れていくけれど・・・・・

          お母さんが面会に来た
          「具合が悪いときは
           休ませてもらいなさいよ」
          それを聞くとすぐに立ち上がって
          「先生頭が痛い」
          と叫んだ やつ

          居住棟から
          メソメソしながら
          電話をかけてくる やつ
          「先生むかえに来てよ」
          と言っている

          作業がはじまっても
          外でふらふらしている やつ
          作業を拒否するわけでもなく
          職員の目が届く範囲を計算して
          座りこんでいる

          居眠りなんてどうってことない
          「賃金」が少しばかり下がっても
          あしたからの暮らしに
          影響するわけではない

          「健常者」並を
          押しつけるわけではないけれど
          「施設」の中には生きていく緊張感がない
          食事は決まった時間に運ばれてくるし
          行事の段取りも
          みんな職員がやってしまう

          朝5時に起きて
          部落の道普請に出ることや
          夕食の後
          公民館の会議があることや
          日曜日を
          消防の訓練でついやすような
          そんな日常は無関係だ
          休日に雨が降ると
          当分のあいだ稲刈りができないことや
          あと5千円で
          一週間をどうやって暮らそうかという
          心配はしなくてもよい

          障害者年金を支給し
          措置費を増額し
          「恵まれた」環境をつくるだけが
          社会福祉ではない
          もっと もっと
          人間としての生活の場を
          緊張感の持てる場をつくりだそう

          甘ったれるなよ みんな
          現状を乗り越えるのは
          みんな自身だ
          寒くなったら
          自分でセーターを出せ
          介護は拒否するくらいの
          気概をもて

                         (1979.10.15)