身だしなみ



          鼻水をたらして
          今にも口に入りそうになっていても
          すすりあげようともしないやつ

          まばらに生えたヒゲの先端が
          カールするほど伸びても
          気にならないやつ

          髪の毛の間からは
          フケが白く浮き上がっている
          爪は切らないから欠けて
          肉さえ覗いている

          少しでも鼻水がみえるとちり紙を与え
          ヒゲが伸びれば剃ってやって
          頭を洗うように何回も声をかけて
          爪は気がついたら切るようにして
          「寮生」が身ぎれいな状態でいられるよう
          心がけている職員

          何回かのくり返しで
          「きたない」とか
          「気持ち悪い」とか
          そういったことを
          感じるようにはなるのだろうけれど

          でも
          鼻水をたらしたり
          ヒゲを伸ばしたり
          爪を切らなかったりしていちゃあ
          いけないことなのかい

          「健常者」である職員の基準に
          彼らを近づけることで
          問題は解決しない
          なぜなら
          「きたない」ことが
          彼らにとっては
          「正常」であるからだ

                          (1979.6.2)