こんにちわ



          おまえを包んでいた
          お母さんのお腹は
          へそから下にいっぱい
          赤い妊娠線ができていた
          おまえが動くと
          黒ずんだ腹が
          ゆっくりと波打つ

          おまえを支えていた
          お母さんの足は
          朝方になると
          筋がつって コチコチになる
          風呂から上がると
          腰や足をもめと
          お母さんがせまる

          おまえが乳を飲むオッパイは
          あのペッチャンコだったのが
          いくらかふくらんできて
          お父さんが試しに吸ったら
          黄色い液が出てきた
          おまえが吸っても痛くないようにと
          オリーブ油をつけて
          お母さんはマッサージをしていた

          おまえの体のもとになった栄養は
          お母さんの丈夫な胃袋により
          切れ目なく補給された
          10ヶ月目に入ると
          実家の店先から
          高価な食料が
          どんどん消えていった

          陣痛がおきて
          病院へ行く朝 
          タクシーを待つ間にも
          バナナを3本かじり
          みかんやお菓子も
          いっぱい袋に詰めたという
          まるで
          遠足に行くかのように

          淳くん こんにちわ

          ガラス窓の向こうで
          看護婦さんに抱かれ
          腕をふって泣いているおまえ
          ずいぶん長かったよ
          おまえの顔を見るまでが