配置転換



          君自身のためだから
          ひいては会社のためだから
          ひとつやってみてくれないか

          恐いもの知らずの勢いだが
          やがて俺くらいの歳になれば
          自然と保守的になるものだよ

          今すぐがだめなら
          予約をしておくから
          次の役員選挙のときには
          出ない運動をすればいいじゃないか

          若くて有能な人には
          どんどん外へ出てもらうつもりだ
          工場で働いていても
          食いつぶしているだけだから

          モーターの回る原理も知らないで
          営業はできやしないよ
          技術屋の営業マンを求めているんだ

          経営協議会かなんかの場で
          ただ一本気だけで   
          主張を通そうとするけれど
          もうひとつ欠けているものが
          あるんじゃないのか
          そんな場面を
          惜しいと思って見ていた

          作業中に呼び出されて
          総務部長と  
          工場長とから
          それぞれ話しかけられました

          お断りします

          長男です
          おやじの腕は
          もう曲がってしまいました
          おふくろは
          はれぼったい顔をしています
          おばあちゃんは
          やっと歩いています
          弟は
          みんな家を出てしまいます
          とても東京へは行けません

          食いつぶしとはなんですか
          私たちは生産をしています
          最大の侮辱です
          今、受注がないのであって
          来年のことなんかわかりません
          予約なんてまやかしです
          何かがプンプン匂います

          工場移転と同時に 
          職場が変わりました
          やっと仕事を覚えてきました
          私の職場は
          全部で3人です
          ひとりは副委員長です
          抜けられる要素がありません

          人生に対しても
          展望を持っています
          目的ははっきりしています
          そのための一歩でありたいと思います
          価値判断ではないけれど
          毎日の生活を
          大切にしたいと思います

          お断りします

          若いうちに
          少しの期間
          東京で暮らしてみたいと
          そんな気持ちが
          かなり大きいけれど

                          (1971.10.28)