あつし 4



          4月から
          保育園に行きはじめたあつしが
          きょうは行きたくないという
          玄関でくつをはかない
          車で送っていっても
          降りようとしない
          降ろしてもまた乗り込んできて
          目に涙をためている
          やっと入り口まで行っても
          下駄箱のところから
          中をのぞいていて入って行かない
          あきらくんという子が
          いじわるをするんだという

          おとうさんも
          小さい頃は弱虫だった
          いやなことや苦しいことから逃げようとしていた
          自分に突きつけようとしなかった
          だからあつしを見ていると
          やっぱり苦しいよ

          でも 気がついたんだ
          強いものに向かっていかなくちゃ
          新しい展望は開けないって
          いつからかははっきりしないけれど
          おとうさんは強くなれた
          強いといったって
          自分自身に対してだけどね

          自分の生き様をごまかさないで
          考えていることは吐き出して
          そして動きさえすれば
          怖いものなんかなくなるよ
          影でいろいろ言われたって
          あまり気にならないし
          なんたって生きようとする気迫が
          自然と生まれてくるもの

          小学校・中学校・高校と
          おとうさんにとっては
          いやなことばかりだった
          だからあつしは
          早く強くなって欲しいよ

          うらめしそうな目で
          こっちを見ているあつしを
          お父さんは見ないふりをして
          車を走らせてくる

                       (1980.5.16)