あつし 3



          急ブレーキをかけると
          前につんのめっておでこを打つから
          ちゃんと座っていろと言うのに
          立ち上がって外の景色を見たいあつし
          大人は座っていても外が見渡せるのに
          あつしには見えないんだ・・・
          なぜなら車がそのようにできているものだから

          手を引いて歩くと
          お父さんの歩調に合わせようと
          駆け足してついてくるあつし
          息をはずませて
          ときにはけつまづいて  
          それでも手を引かれているから転べなくて・・・
          あつしは足が短いから
          速く歩くのは大変なんだよね

          身長89センチのあつしは
          大人より気温が1度低い空気を吸っている
          あつしの目に映る世界は
          多くのものが見上げるかたちだから
          きっと 大人とはちがうんだ

          お父さんが見るものや
          体で感じることなんかを
          あつしに押しつけはしないから
          あつしは
          自分の判断で
          どんどん動き回るのだよ

                       (1978.12.16)