遅番をあがって家に帰ると
午後10時をすぎていた
あつしは まだ寝ないでいて
「とうきた とうきた」と
お母さんの横から這い出てきた
こたつにはいると
絵本を手に持って
ひざの間に入り込んでくる
もう何回も見た絵本なのに
「ブーブーいっぱい」「ニャーいる」と
ひとつひとつ指差し
感嘆の声を上げる
絵本を1冊見終わると
テレビのスイッチを入れ
「とおんの!」と言って
スポーツ新聞を運んでくる
お父さんはいま
おまえのことを
あまり考えていないよ
電灯を消して
腕まくらにして
背中をさすっていたら
寝息を立てはじめた
おまえが
お父さんの腕の中で眠りについたのは
今夜がはじめてだ