あきちゃん と ちえちゃん


          小学校へ6年間通った あきちゃん
          みんなからかわいがられ
          楽しく学校へ行ったという
          いつも笑顔を絶やさず
          キャッチボールが好きだ

          3年間にわたって
          毎年入学を試みたが
          いずれも1ヶ月でやめた ちえちゃん
          いつも落ち着かない目つきで
          他人の言葉をそのまま反復する

          性格的なものもあるのだろうけれど
          この違いはなにだろう
          二人の幼児体験の差から
          くるものではないだろうか

          ひまわり(重度棟)にいた あきちゃんは
          3年前にしらかば(授産部門)へ来た
          「あきちゃん!」と呼んでも
          「ンー」としか返事をしなかったのが
          このごろ家に帰れば
          靴やももひきを要求するという
          まだ他人には恥ずかしそうな顔を向けるが
          お母さんにはうんと話をするようになったという

          なによりも大事なのは
          あきちゃん や ちえちゃんを
          ひとつの場所へ押し込んで
          いろいろ教えることではない
          社会の中で
          みんなにかこまれて生きてこそ
          個々のいちばんまともな「発達」が
          可能になるのだ
                             (1979.2.20)