箍をはめ、
  楔を打ち込む



 「コンサルタントの評論は、現場の実践には勝てない」これが私の持論であっ
た。そう思っていた理由は、
 
 ① 生産現場の問題は多種多様であり、解決方法についても同様であるから、
   必ずしも 教科書どおりにいかないこと。
 ② たまに見る程度で問題の原因はわからない。たとえわかったとしても、それ
   を取り 除くことの方がたいへんである。
 ③ 確かにヒントは与えてくれる。しかし結果までフォローしてくれるわけではな
   い。
 
などであった。「現実に結果を出している」というおごりが、そういった発想を生み出していたのだが、実際の問題として、外部から導入したコンサルタントとうまく
噛み合っている例が、はたしてどのくらいあるのだろうか。
 
 日常の生産活動に追われ、なかなか改善に手がつかない。問題があるのはわかっているのだが、どうすればいいのかわからない。そうはなっていないつもりでいても、発想そのものが固定化している。そんな場合、外部の人のアドバイスを受けるのが手っ取り早いのであるが、なかなか実践までフォローしてくれる人がいない。セミナーに出席する。文献を読む。そのときは理解したような気がしていても、工場に帰って来て現実の問題にぶつかると先が見えなくなってしまう。
 
 こういった問題意識を持っていた私が、去年の4月から「業務改善のコンサルタント」として独立した。今まで自分勝手に唱えていたことを、今度は実行しなければならないのである。これはたいへんなことだ。立場が逆になった。自分で自分の首を絞めるようなことを、今まで言っていたのである。ただよく考えると、これらの問題意識の上に立って展開していけば、本当に役に立つことができるのではないか。その会社と一体になって、結果を出すことができるのではないか、と、今は思っている。
 
 そういった意味では、はじめから自分に『タガ』をはめることになる。あとは『クサビ』を打ち込んで身動きできなくすることだ。いずれにしても、逃げ場のないよちよち歩きがはじまった。
                                       (2000.11)