総論賛成、
  各論反対



 「総論賛成、各論反対」。すでに語り尽くされてきた言葉ではあるが、まだまだ日常においてよく出会うものがこれだ。
 
 方針は決まった。それは今会社が直面している問題であり、誰もが取り組まなくてはならないテーマであるから、みんなの意見は実施の方向で一致した。それではと、具体的な実施項目と担当者を決め、スケジュールを作成する段階になると、できない理由がいろいろ飛び出してくる。ひとりひとりは、意識して反対しているつもりはないのであろうが、結果として、最初に確認した方針が実現できない方向に、どんどん進んでいってしまう。
 
 なぜそうなってしまうのかというと、会社全体の利益よりも自分の立場に、それも自分が受け持っている部門の、現実の姿に目がいってしまうからである。たとえば、実行する人がいない、設備が足りない、スペースがない、管理する範囲が広くなってしまう、といったことなどである。たぶん、実態はおっしゃっているとおりだと思われるが、そこには、いかにして実現させるか、実現させるための条件作りをどうやって進めていくのかといった発想が、決定的に欠けている。だからやりませんで済ますことができないではないか。
 
 大切なことは、当面の相手は誰かといったことを明確にしなければならないこ
と。その相手は、ほとんどの場合自社の中にはいない。多くの場合は、今市場で競合しているライバルメーカーである。競合するポイントは、値段であり、品質であり、納入リードタイム。それらと商品力が相まって市場で受け入れられるかどうかが決まる。別に理想や夢を追い求めているのではない。総合力でライバル他社を上まわればいいだけのことだ。そうしないと生き残れないのだ。
 
 相手が社外にあるとなると、自部門の「しがらみ」から一歩抜け出した発想を持たないと、なかなか先は見えてこないし、活動自体がしんどいものになってしまう。会社のトップである社長が、いつも考えているレベルに少しでも近づいていただきたいのだ。でないと、改善はちっとも進まない。
 
 意識を「個人」のレベルから発生させるのではなくて、「社員」のレベルまで高めていただきたい。個人のレベルとは家庭における私生活の延長線上から出る発想。家庭はものを消費する場であり、会社はものを作り出すところである。両者を比べると、行動形態が180度違っているのだ。個人の意識は会社の門をくぐった瞬間に捨て、会社に一歩踏み込んだらところで発想を切り替えていただきたい。これがなかなかできないから、簡単な課題さえどんどん難しくなっていってしまい、ときには後戻りさえしてしまう。
 
 総論を賛成したなら、各論はそれをいかにして実施させるのかといった展開にする。できない理由があれば大歓迎。それだけ目の前の問題が明確になったということである。だから、それを解決するための具体的な方法も併せて説明して、はじめて組織人としての行動になってくるのだ。 
                                       ( 2001.8)