気になって
 仕方がないこと



 いくつかの会社を訪問していると、私が気になって仕方がないことがいろいろある。あくまで私の物差しでしか捉えていないから、異論のある方も多いかもしれないが、それらをここで紹介してみたい。
 
 ユニフォームをきちんと着用しない会社。ほとんどの社員が羽織っているだけで、前のファスナーを閉めていない。そればかりでなく、ユニフォームの裾から
は、下に着ているTシャツがだらんとはみ出している。服装と仕事の質とには因果関係はないと言われるかもしれないが、健全な身体に健全な心が宿るがごとく、こんなことがおざなりになっている会社で、他のことがきちんとなされているとは思えない。
 
 ISOの審査の日、「経営者の責任」のインタビューを受けるためにテーブルについた社長、おもむろに持ってきた缶ジュースのプルトップを開封し、審査員の前でぐびりぐびりと飲み始めた。自分だけで飲まずに、審査員にも勧めろと言いたいのではない。休憩時間と仕事の時間との区別もできないような経営者ではどうしようもないではないか。それを眺めている部下が、いったいどんな行動をとれば気に入られるのであろうか。
 
 会議(改善活動)が時間通りに始まらない。事務局の担当者は、各部署に電話をして人を集めている。これが毎回繰り返されるのだ。遅れてきたからといって誰も叱らない。時間が来たら始めてしまえと私は言う。始められる条件を前もって作っておけと言う。すると、次の活動くらいはみんな時間正確に集まるが、それが長続きしない。
 
 タバコの煙でむんむんしている事務所。個人机の上にある灰皿は山盛りで、気を付けて見てみると、いつも誰かひとりは必ずタバコをくわえている。タバコを吸わない人から見れば、とても仕事ができる環境ではない。タバコを吸うことが許されるのなら、あんパンやスナック菓子をかじりながら仕事をするのも、ここでは許されるのであろうか。せめて喫煙してもいい場所を決めて、そこでしかタバコを吸ってはいけないようにできないものか。私がいつも予約をする特急列車は、まず禁煙車両から席が埋まっていく。
 
 始業時間があるのだかないのだかわからないような会社。朝私が顔を出すと、事務所の掃除をやっている人がいる。一方では出勤してくる人がおり、管理者はまだどこにも見あたらない。世の中の会社は、もうすでに動き出している時間帯だ。フレックス制を導入しているのではない。私は何度となく「会社の始業時間はいつですか?」と訊いた。いつも同じ時間が答えとして返ってくるが、その時間には社員が仕事をしていないではないか。それでいて休憩時間と終業時だけはきちんと守られていると思うのは、私の気のせいであろうか。
 
 仕事に対する自由な発想が出せる環境と、けじめのない職場実態とをごちゃ混ぜにしてはいけない。自分自身の価値観と、組織人としての行動とを混同させてはいけない。こういった状態の会社に、なぜだかわからないが、私の提案は不思議と受け入れられることが少ない。
                                         (2001.9)