七重八重花は咲けども山吹の みのひとつだになきぞあやしき 『後拾遺和歌集』(兼明親王) 江戸城を築いた太田道灌が、鷹狩りに出たときひどい雨に降られます。 簑でも借りられまいかと近くの農家に立ち寄りましたが、農家は貧しく、簑ひとつすらなさそうなあ り様でした。 すると一人の少女が出てきて黙って「山吹の花」を差し出したそうです。 太田道灌は、不思議がってその花を城に持ち帰り、その話を家臣にしたところ、少女の意が、山 吹の花にちなんだ古歌「七重八重 花は咲けども 山吹の 実(簑)のひとつだに なきぞ悲しき」 にあったことを教えられました。 道灌は、少女の機知にいたく感心するとともに、自分の教養の無さを恥じ、その後大いに学問に 励み、文武両道を備えた名君といわれるようになったということです。 山吹はバラ科の落葉低木で、低い山地や水辺に生えます。 3月から5月にかけて、鮮やかな黄色の花が咲き、八重山吹には実ができません。 この写真は、松本から上田に抜ける青木村の峠で撮影しました。 私は、画面の上側にある、山吹のまるっこい蕾が好きです。 |