2008年版の要求事項と内容が変わったこととして、次のようなものが挙げられます。
品質マニュアルについての記述がなくなった |
文書と記録の区別がなくなり、 「文書化した情報」という表現になった |
管理責任者に対する要求がなくなった |
リスク管理が求められている |
しかしながら、それらをはじめとする項目の内容が変わっただけでなく、要求事項の序文で「品質マネジメントシステムの採用は、組織の戦略上の決定である」と言い切られているように、ISO9001の展開を狭い意味での「品質」に限定するのではなく、企業の経営戦略にきちんと組み込まれた上で運営することが求められているものになりました。
このことには、ISO9001の取得が、もし今まで単なるライセンスとしての位置づけであったのなら、それを組織の経営戦略そのものに変えなさいというメッセージが込められているはずです。つまり、ISO9001の運用からは、企業の戦略的な方向性に合致した、「意図した結果」を達成しなければならないものになってきたと言えるのでしょう。
その「意図した結果」とは、顧客満足の向上であり、継続的な改善であり、企業のレベルアップでありますから、プロセスアプローチがきちんとでき、問題の顕在化が図られ、それを解決していくための改善活動を組み立てられるような、マネジメントシステムを構築し実践しなければならないということになります。
本書では、2015年版の要求事項を「改善屋」としての視点から捉え、マネジメントシステムをどうやって構築し、それを効果的に実践していくための提案がなされています。これから新たに認証を取得しようとしている企業、社内のマネジメントシステムを2015年版の要求事項に対応させていこうとする企業、そしてISOの管理手法を改善のツールとして活用したいと考えている企業の、経営者および担当者さらには社員の方々にぜひ読んでいただきたいことを願っています。
-
第1章 ISOは私たちに何をもたらしたのか
- ISOに違和感を感じていた黎明期
- ISOがもたらしたいつくかの弊害
- 何のためにISOの認証を取得するのか
- ISOの「事務処理」を2.5万円/月で請け負い、30万円で取得をするという業者
- ISOの認証取得はゴールなのかスタートなのか
-
第2章 ISO9001の要求事項改訂の狙いを認識しよう
- 序文に書かれていること
-
第3章 要求事項はここが大きく変わった
- ISO9001を遡上に挙げる理由
- ISOの基軸となっている精神を再確認しよう
- 2015年版で大きく変わったところ
- 品質マニュアルは作成しなくてもいいのか
- 記録という表現がなくなった
- 品質マニュアルはこう考えよう
- 管理責任者を置くのか置かないのか
- 「Pマーク」がISOと同じ道をたどっている
- マネジメントシステムは誰が推進すればいいのか
-
第4章 ISO9001の要求事項 2015年版を解析する
- 内部監査はどうやって運用したらいいのか
- マネジメントレビューはどうあるべきか
- 目標管理はどのように進めればいいのか
- 財務会計を戦略会計にしていこう
- 品質目標は利益をいくら出したいというものだけでいい
- 力量とは何か、そしてどうやって備えさせるのか
- 是正処置とは再発防止対策のこと
- ユーザークレームは何を意味するのか
- 不良についての考え方をまとめてみた
- 品質方針は企業の進む方向の明確化である
- 文書化はどう進めればよいのか
- 見える化は誰のために行うのか
- 識別は形だけを整えてもダメ
- トレーサビリティは企業の果たすべき責任の延長上にある
- 組織の役割、責任、権限はどこかに記述してあればいいというものではない
- 経営者が組織に期待する思いを明らかにする
- 顧客や外部提供者の所有物にはふたつのパターンがある
- 品質マネジメントシステム構築の前提となるもの
- 利害関係者は広範囲に及んでいる
- 「適用除外」という考え方は廃止されている
- 業務プロセスはフロー図で表そう
- 経営者の責任がより具体的な内容になった
- 顧客重視の重要性を再認識しよう
- 企業の実力に合ったマネジメントシステムを作ろう
- 資源とは、マネジメントシステムを有効なかたちで発揮させるための条件である
- インフラストラクチャーは資源の中の物理的な条件である
- プロセスを運営するために必要な環境を明確にする
- 機器を使った監視・測定の運用について
- トレーサビリティの選択肢はプロセスコントロールの内容にある
- 知識は、やっていないことまでを対象としないこと
- 認識は、全員参加の行動として実現させる
- コミュニケーションは情報を共通の価値観のもとに共有すること
- 業務を進めるプロセスに対する計画について
- 個別の製品やサービスに関する顧客とのコミュニケーション
- 製品の仕様や規格を明確にしていく前に、まずはコンプライアンスの部分をきちんと押さえよう
- 要求事項のレビューは、顧客に提供することを決める前に行うこと
- メールが文書化した情報の保持に役に立つ
- 要求事項の表現が曖昧になっている
- 「設計・開発」の対象が大きく変わっている
- 要求事項をチェックリストにして、自社の仕組みの弱い部分を表現しよう
- 要求される、設計・開発の検証および妥当性確認活動
- 生産試作の目的は設計品質の評価である
- 設計・開発プロセスに関する責任および権限
- 製品およびサービスの設計・開発に必要な内部資源および外部資源
- 設計・開発プロセスに関与する人々の間のインターフェース管理の必要性
- 設計・開発プロセスへの顧客およびユーザの参画の必要性
- 設計・開発の要求事項を満たしていることを実証するために必要な文書化した情報
- 設計に着手する前に明らかにすべきことは何か
- 曖昧なことを解決しないまま次のステップに移ってはいけない
- 設計の管理はD-Q-C-Sで行う
- 社内DR(デザインレビュー)は3回実施すれば十分だ
- アウトプットの質はインプットのレベルで左右される
- 変更管理は実態に応じた柔軟な運営を行おう
- 「供給者」が「外部から提供される」に変わっている
- 受け入れ検査をどう考えればいいのか
- 外部提供者とのやりとりをフロー図にしてみる
- 自社で製造およびサービス提供を行う場合の管理
- いま行われている保存方法を再確認してみよう
- 引き渡し後の活動は、顧客がその内容を認識していることが重要
- 変更の管理は変化点に注意せよということ
- リリースのテーマは、後工程や顧客に100%良品を届けること
- 「不適合製品の管理」が「不適合なアウトプット」に変わった
- パフォーマンス評価とは、仕組みの構築と運用についての評価である
- 顧客満足度の把握は、アンケートの実施だけでは不十分だ
- 分析および評価は改善活動に結びついているか
- 「予防処置」が「リスク管理」に置き換わった
- リスクに対しては体系的なアプローチを確立すること
-
第5章 ISOを改善活動のツールにしていこう
- ISOが改善活動のツールになる
- 改善活動をビジョン追求型から問題解決型に転換させよう
- ながめる、見る、観る
- 改善のポイントは固定観念を打破すること
- 改善策は3つの段階に分けて考えよう
- 打ち上げ花火ではなくてスターマイン型の改善活動を
- 改善活動とはすなわち人を育てること
-
第6章 マネジメントシステムはどうやって構築すればいいのか
- 要求事項の改訂を機会にして自社のマネジメントシステムを見直す
- ISOのために新しいことをしないこと
- 業務プロセスの棚卸しをする
- 品質マニュアルはどういう内容にすればいいのか
- 文書化の要求はどこにあるのか
- P-D-C-AはC(チェック)からスタートすべし
- 5Sを行うことが目的となってはいないだろうか
- 他のISOとの統合をどう考えたらいいのか
-
第7章 審査の場面に何を期待しようとするのか
- 審査機関に何を求めるのか
- ISOで企業の主体性を発揮しよう
- 審査機関を評価しよう
- 進化している要求事項
- 審査員は固定した方がいいのか悪いのか
- 審査のプログラムは部門におくのかプロセスにおくのか
- 審査はどういう方向に向かうのか
- 1950年
- 長野県生まれ
- 1968年
- 長野県立駒ヶ根工業高校卒業。
- 1991~1999年
- (株)長野ケンウッド 改革推進室長として生産革新活動の実践にあたる。
- 1999年~
- 業務改善コンサルトとして独立、現在に至る。
「ISOは会社を変えることができるのか」は、Amazonよりご購入いただけます