とうもろこし



          とうもろこしがひと切れ
          机の上に置いてあった
          「森田さん」と書かれた
          紙片を添えて

          誰だろう
          置いていってくれたのは
          頬張ると
          口いっぱいに広がる味
          これはふるさとの味
          僕を育ててくれた
          ふるさとの田畑の香り

          ひと切れだから
          その人の気持ちが胸にしみ入り
          一粒一粒かみしめる
          ひと切れだから
          なお、うれしくて
          ながめながら食べる
          食べ終わっても
          殻を捨てる気になれない

                        (1968.8.23)